皆さま、こんにちは。
このような辺境まで、お越しいただき、ありがとうございます。

メンテも長くかかるとのことですので、気分転換に殴り書きした物です。
今回は、シクラメンちゃんとの触れ合いから、冒頭部分になります。

私の中にある、彼女のイメージを出してみましたが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

ブログでは、管理が難しいので、別サイトでも載せることにしました。

《サイト様》 WEB小説投稿サイト ハーメルン

お好きな方で、お楽しみいただければ嬉しいです。

【注意】

この二次小説は、DMMのブラウザゲーム、フラワーナイトガールをモチーフにした物です。
世界観等、なるべく、私の理解している範囲で踏襲しましたが、一部、ゲーム内とは異なる設定にしております。
そのつもりで、お読み頂けると助かります。

一部、ゲーム内のネタバレを含む予定です。
ネタバレを気にする方は、お気をつけ下さい。

何分、このような二次創作をしたことが無いので、気になる点は多くあるかと思います。
ご指摘頂ければ、可能な範囲で対応致しますので、宜しくお願い致します。

シクラメンと新米団長(2)

 奴らが、迫って来る。

不快感をもたらす虫の姿が、奴らの羽音が、俺を追い詰める。

 

やめてくれ。もう、うんざりだ。何で、俺が、こんな……。

 

暗闇の中、逃げようとしても、まるで泥の中を進んでいるかのように、全く前に進まない。

それでも必死にもがくが、そんな俺の行動をあざ笑うかのように、徐々にその羽音は大きくなっていく。

 

ああ、駄目だ。このままじゃ追いつかれる。誰か、誰か!!

 

叫ぼうとしても、声が出ない。息が苦しい。胸が詰まる。

そして、気が付いてしまった。もう、助からないという事に。

俺は、こんな所で、こんなにあっけなく、終わるのか?

 

誰か……助けてくれ!

 

だが、その声は何処にも届かない。

そうして、羽音が耳元に迫り、俺の意識が、絶望に飲み込まれそうになった時……ふと、誰かの声が聞こえた気がした。

 

次の瞬間、温もりが俺を包む。

それは、今迄の苦しみが本当に嘘だったと錯覚を覚えさせるような、そんな心地良さだった。

例えるなら、春の麗らかな陽気に、木の下で風と共に遊ぶ、木漏れ日のような、心をふわりと浮き上がらせるような、暖かい物だ。

 

ふと、誰かの手が優しく、俺の頬を撫でた気がした。

それはまるで母親の様に、優しさと温もりに溢れていた。

 

ああ、ありがとう。暗闇から救ってくれて、ありがとう……。

 

そんな風に、俺は感謝をしつつ、意識を浮上させる。

 

そうして、目を覚ました俺の目に飛び込んで来たのは、今迄経験したことが無い程、至近距離にある、美少女の顔だった。

突然の出来事で、俺は今までの事も全て吹っ飛び、マジマジとその顔を見つめてしまう。

同じ様に、向こうにしても突然の事だったのか、彼女も驚いた表情を浮かべたまま、目を見開いて固まっていた。

 

そんな彼女の顔を、どこか夢心地のまま、観察してしまう。

 

年の頃は高校生から大学生と言った所だろうか。

きめ細かな桃色の髪をそよ風になびかせ、俺の顔を穴が開くんではないかと言う勢いで、見つめている。

何故か前髪だけ異様に長いものの、肩口にも届くか届かないかといった程、短めに切りそろえられた髪は、風に乗ってその表情を変える。

揺れる前髪の隙間から見えるその瞳の色は、燃えるような赤さに柔らかさ宿した朱色に近い物だ。見ているだけで、吸い込まれるのでは無いかと、錯覚してしまう程、その透明度は高い。

 

ふと頬に温もりを感じ、何気なく俺は、自分の手をその温もりへと重ねる。

俺の手が、その温もりに触れた瞬間、彼女がビクリと身を震わした。

 

どうやら、彼女の手が俺の頬に添えられていたらしい。

計らずとも、俺は彼女の手を上から握った形になる。

 

ふむふむ、そうか。

 

少しずつ意識が覚醒するに伴い、妙に後頭部から、何とも形容のしようがない、幸せな感触が伝わってくるのを俺は感じた。

頭が、柔らかく、暖かく、良い匂いに包まれている。

 

目の前の美少女。頭に当たる柔らかい感触。

つまり、この状況の意味する所は……膝枕であろうか。

 

そうか。膝枕か。なんと、心地よい感触だろうか。

このまま、顔を埋めたくなる衝動が沸き起こるも、辛うじて残っていた俺の理性が、現実へとその意識を引き戻した。

 

あれ? 何で俺、この人に膝枕されているんだ?

 

やっと頭が回って来た俺に、更なる疑問が沸き起こる。

そんな状況が飲み込めない俺が、改めて彼女のその整った顔に目を向けると、当の本人は、湯気でも出るんじゃないかと思う程、真っ赤になっていた。

 

「あ、あの、えっと、ご、ごめんなさい! わ、私なんかの膝枕で申し訳ないのですが、す、凄く苦しそうだったので、そのえっと……。うぅ」

 

焦ったように捲し立てた後、顔を真っ赤にして黙ってしまった彼女の言葉で、俺は先程までの出来事を漸く思い出す。

背後から迫る羽音。巨大な虫達。

 

そうだ、俺、死にかけていたんだっけ?

 

「あ、もしかして、助けて、くれたのかな?」

 

何気なく呟いたその言葉が、どうやら正解だったようで、彼女はおずおずと言った感じではあるが、頷きをもって俺の言葉を肯定した。

 

そうか。彼女は、俺を助けてくれたのか。

徐々に、先程体験した恐怖が、俺の心に湧き上がって来る。

 

あの絶望感。焦燥感。怒り。そうした負の感情のるつぼから、彼女は俺を救い出してくれたのか。

 

「そっか。助けてくれて、本当に、ありがとう」

 

何の迷いもなく、お礼の言葉が俺の口から、するりと漏れ出た。

ああ、こんな素直な気持ちで礼を言ったのは、いつ以来だろうか?

心の片隅で、そんな感動に似た何かの感情を噛みしめつつ、俺は彼女の反応を見る。

 

何故か彼女も、俺の言葉に驚いたようで、こちらを凝視していた。結果、その視線が俺の物と重なり、暫しの間、見つめ合う。

あれ、何か俺、おかしな事言ってしまっただろうか?

 

そんな不安が顔に出てしまったのだろう。その表情の変化を認めたであろう彼女が、一転して、焦ったように顔を前髪で隠してしまった。彼女の頭から飛び出た一房の髪が、柔らかく揺れる。

一瞬その動きを目で追ってしまったが、ふと見ると、見事としか言いようがない程、彼女は瞬間的に、顔を真っ赤に染めていた。

そんな湯気の出そうな程、何かを恥ずかしがっている彼女の薄い唇が開き、言葉を紡ぐ。

 

「あ、いえ、あの、その、えっと……ありがとう、ございます」

 

そして、何故か礼を言い返された俺。

 

いやいや、何でお礼に、お礼を返すんだか。

と言うか、何をそんなに恥ずかしがっているのだろうか?

彼女は俺の命を救ってくれたんだ。感謝するのは、ごく自然な流れだと思うのだが。

うーむ、彼女がそれを驚く理由が、更には、それに感謝で返す理由が、全く思い当らない。

 

一瞬頭に浮かんだそんな疑問達だったが、目の前で「うぅー」とか、「ふぅー」と、無意識に唸りながら慌てる、彼女の様子がどこか面白くて、つい、俺はクスリと、笑みをこぼしてしまった。

そんな俺の笑みを受けて、彼女はますます顔を真っ赤にしていく。

しかも、どうやら、猫背の様で、俯くたびに、顔が俺に近づいてきて、それに気が付くと、彼女は慌てて離れる、と言う、何とも面白い状況を続けていた。

 

うーむ、何この生物。ちょっと可愛すぎるんですけど。

 

こう、思わず抱きしめて、頬をツンツンと突っつきたくなる、そんな凶悪な愛らしさを彼女は素で出していた。

小動物のような、愛らしさと言うか、暖かさと言うか、そんな雰囲気を纏っている彼女は、男からすれば、絶滅危惧種に近いと思う。

本来であるなら、降って沸いたような、この幸福な時間を手放す手はない。このまま彼女を見ていたいと思うのだが、俺の冷静な部分が、こんなことをしている場合ではないと告げていた。

 

そう。先程の虫の様な奴が、まだいるかもしれないのだ。

このような危険な所で、こんなことをしている場合ではないのだろう。

 

真っ赤になって悶える彼女を見上げつつ、後ろ髪を引かれる思いではあったが、俺はそんな気持ちを振り切るように、明るく声をかける。

 

「あ、起きたいんだけど、良いかな?」

 

そんな俺の言葉に、一瞬、首を傾げた彼女だったのだが、その言葉の意味に気が付いたのか、慌てて、彼女は背を伸ばす。

彼女が前屈み気味なので、俺が顔を上げると、彼女に頭突きをかます形になってしまうのだ。

一瞬、横に転がればいいじゃないと、思わなくもなかったが、それはそれで、どこか逃げるような感じで嫌だった。

 

「あ、はぃ。ど、どうぞ……」

 

それに、こんな可愛い彼女を見られるのなら、普通に起き上がった方が良いだろう。

何故か上を向いて背を伸ばす彼女を見て、改めて、笑みがこぼれる。

 

「ありがとう」

 

そう言いながら、俺は状態を起こして、改めて姿勢を正すと、彼女を真正面から対峙する形になった。

 

長く伸びた前髪が、彼女の可愛い顔を、覆い隠してしまっている。

だが、その隙間から、チラリと垣間見える彼女の上目遣いの視線が、俺の視線とぶつかった。

そして、「はぅ」とうめくと、恥ずかしそうに顔を伏せてしまう。ちなみに、今なお、彼女は耳まで真っ赤である。

 

ただその場に一緒にいる。それだけで、心が洗われるような気持ちになったのは、生まれて初めての経験だった。

時間がゆっくりと流れるような錯覚すら覚える。

 

面白い子だな、と思う。そして、それ以上に、不思議だとも思う。

 

ピンクの髪に、朱色の目。そんな子は、俺の世界には居なかった。

そりゃ、ウィッグやら、カラーコンタクトやらで、そう見せる事は可能ではあっただろうが、そんなまがい物と、目の前の彼女を比べるのは、彼女に失礼だと思える。

それ程に、彼女のその容姿は、自然であり、良く似合っていた。

 

そんなあり得ない容姿、そして、先程の有り得ない出来事が、俺にその答えを告げている。

 

ここは、俺の知っている世界ではないんだな。

 

改めて、そんな実感が、胸の奥に根付いた。

それならば、俺には、今、この子をおいて頼れる人はいないだろう。

意識を変えなくては。ここでまず、俺は生き残らなくてはならない。

その為、まずは言葉遣いを変える。なるべく、丁寧になるよう、心がけることにしよう。

 

「改めて、本当に危ない所を助けて頂き、ありがとうございます」

 

俺は、改めて謝意を伝える為、腰を折り、礼を述べる。

そんな俺の言葉に、慌てた様に手を目の前で振りながら、

 

「え、あ、い、いえ、こちらこそ、ごめんなさい! 私がもっと早く来ていれば、あんな危ない目に合う事もなかった……と思います」

 

そう、申し訳なさそうに俺の言葉に答える彼女。

その顔は多少、混乱でもしているかのようで、勢いもそのままに、頭を下げ返されてしまった。

なんだか、どっちが礼を述べているのか分からない状態である。

 

「いえ、命を救ってもらったのは事実です。貴女がいなければ、私はどうなっていたか。本当に、ありがとうございます」

 

「そ、そんな! き、貴族様に頭を下げられるなんて、こちらが困ってしまいます。顔を上げて下さい!? それに、私は、准騎士とはいえ、|花騎士《フラワーナイト》候補です! と、当然の事をしただけですから」

 

今度は、饒舌に語るも、一気に捲し立てると、圧倒される俺の様子を見て、我に返ったのだろう。

「……ご、ごめんなさい」と、何故か真っ赤になって、俯いてしまう。

 

今の一言で、何か色々と、解釈に|齟齬《そご》がある事が分かった。

そして、聞きなれない言葉もあった。

 

花騎士《フラワーナイト》? それは何なのだろうか?

 

その辺りを問いただしたいと思うが、今はそれよりも、誤解を解く方が先だと判断する。

このまま、流れに任せてしまうと、とんでもない所に行き付いてしまいそうだからな。

 

「あ、私は、貴族ではありませんよ。一般市民です。しがない、サラリーマンですよ」

 

そんな俺の言葉に、彼女は一瞬、驚いたように目を|瞬《しばた》かせると、次の瞬間、ふっと、柔らかな笑みを浮かべた。

一瞬、ふわりと風が舞ったような気がしてしまう程、それは温かい物だった。

 

「そんな嘘を吐かれて、私を試していらっしゃるのですね? ふふ、大丈夫ですよ。貴族の方がお忍びで、こんな所に居たという事は、公言いたしませんから。さらりーまん? と言う、隠密行動中なのですね? お仕事、お疲れ様です」

 

「いや、ちょっと、ま……」

 

何故か、良く分からないが、ど真ん中直球に投げたボールが、変な返され方をして、流石に俺は慌てて、修正しようと試みる。

だが、そんな俺の言葉を遮るかのように、大音声が、草原に響き、俺の焦った声を掻き消してしまった。

 

「……クラメーーーェン!! 何処に居るんだぁ!!」

 

遠くからでも良く通るその声は、俺の注意を引くだけでなく、呼ばれただろう彼女から笑顔を奪う。

 

「あ、ご、ごごごめんなさい! わ、私、任務中、でした……」

 

先程とは打って変わって、真っ青な顔になると、徐ろに立ち上がる彼女。

 

考えてみれば、そりゃそうだよな。

わざわざ俺を助けに来たというより、何かをしている最中に、偶然、俺を見つけて助けてくれたに決まっている。

なら、本来やるべき事がある訳で、彼女は、まだそのやるべき事を、継続している|最中《さなか》なのだろう。

 

しまったなぁ。結果的に、彼女に迷惑をかけてしまった事になるな、これ。

 

一人で色々と浮かれ上がっていたが、命の恩人でもある彼女に、これ以上迷惑をかけるのは、俺の本意ではない。

なら、俺のやらなければならない事は、決まっているな。

 

立ち上がった彼女に習うように、俺も腰を上げる。

思わず、と言った様に俺に視線を寄越した彼女に、俺は落ち着いて、口を開いた。

 

「では、お邪魔でなければなのですが、私も一緒に着いて行っても宜しいでしょうか? この場所は危険でしょうし、私を助けて下さった、お礼も伝えたいですから」

 

一瞬、俺の申し出に驚いたようだが、その意図がすぐに伝わったのだろう。

迷うような素振りも見せたが、すぐに決めたようだ。

 

「そう、ですね。ここも確実に安全な訳でもありませんし。では、貴族様? 私に、着いてきて頂いても、宜しいでしょうか?」

 

「壇 長人《だん ながと》です」

 

「え?」

 

「私の名前、壇 長人って言います。仲間からは、だんちょーって呼ばれていました。宜しければ、お好きにお呼び下さい」

 

そんな俺の言葉に、目の前の彼女は、何故か驚いたように言葉を失っていたが、すぐに、顔を真っ赤にして震え始めると、今日一番の大声で、彼女は捲し立てる。

 

「ま、まさか、貴族様でもあり、団長様とは!? そんな凄い方とは露知らず、ご、ご無礼の数々、もももも、申し訳ありません、でした!?」

 

「いや、ちょっと……」

 

「そんな方に、わ、私、膝枕、とか……わ、私なんかの膝で、本当にお詫びのしようも、あ、ありません」

 

「いや、だから……」

 

「そ、そうですよね。そんなお高そうな服装に加えて、弱い害虫とは言え、お一人で倒してしまったんですから。ほ、本当は、私なんかでは、声をかける事すら許されないような、高貴な方に決まっています! そ、それを、私ったら……」

 

益々、妄想が妄想を呼び、俺の地位が神格化されて行くのを、流石に見ているわけには行かなかった。

 

「ちょっと待てぃ!?」

 

「ひゃぃ!?」

 

思わず、叫ぶようにツッコミを入れてしまったせいで、ただでさえ混乱していた彼女は、その長い前髪の隙間から、上目遣いで俺を見上げつつ、生まれたばかりの子犬のように震えて様子を伺うだけになってしまった。

 

うん、どうやら、俺は事態を悪化させたようだ。

しまったなぁ……何でこうなった……。

 

そう思いつつも、目の前で混乱したように震える彼女が悪いわけではない。

まぁ、若干、そそっかしい所があるようだが、彼女は本当に、俺を心配して、助けてくれたんだよな。

自分の仕事を投げ打ってでも、俺を救ってくれたんだから。

 

ならば、まずは、彼女がこれ以上、自分を追い込まないようにする必要がある。

だから伝えよう。結局、それしかないだろ。

俺がどれだけ、感謝しているか。どれだけ、嬉しかったか。

俺の言葉で、彼女に伝える。それが、少しでも彼女の自信に繋がるならば、俺にとっても、彼女にとっても嬉しいことになるはずだ。

 

「私は、死にかけていました。それを、貴女に救われたんです。恥ずかしい話ですが、あの虫達が怖かった。逃げ出したくて、けど、どうにもならず絶望していた私を、救ってくれたのは、貴女なんです。それは、紛れもなく、貴女のおかげなんです」

 

俺の言葉を受けて、彼女は何かに気がついたように、ハッと顔を上げる。

そんな潤む朱色の目を見返し、俺は更に感謝を述べた。

 

「膝枕、とても暖かかったですよ。それ以上に、心配してくれたその心遣いが、私には嬉しかった。だから、何度でも言います。本当にありがとう。私が何者であれ、私を救ってくれたのは、貴女なんです。感謝の気持ちを伝えたいのも、貴女になんです。それだけは、お願いですから、否定しないで下さい」

 

呆けたように、俺の言葉を聞きながら、彼女は、真っ赤な顔を、まっすぐに向けていた。

 

「私……で、良いんでしょうか?」

 

思わずと言った感じだろう。漏れ出た様に、そう呟く彼女に、俺は強く頷く。

 

「貴女しか、いませんよ。……いや、貴女が、良いです」

 

俺のそんな言葉に、彼女は目を潤ませると、顔を伏せてしまう。

相変わらず、頬だけでなく顔を真っ赤に染めながらも、小さく頷いたのを、俺は見逃さなかった。

 

良かった。何とか分かって貰えただろうか。

これで、少しでも彼女の自信が育ってくれれば、嬉しいと思う。

いつの間にか、俺は微笑んでいた。

彼女も、そんな俺に釣られるように、控えめな笑みを見せる。

 

緩やかで温かい空気が、俺と彼女を包んだ。

それは、再度、彼女を呼ぶ声が響くまで、ゆったりと続いたのであった。